石井トミコ 肉体の門 敗戦に虚脱し、疲れきった男たちの間に、毒々しい悪夢の花を咲かせる女たち。十七歳のマヤ(野川由美子)が、関東小政のおせん(河西都子)のグループに仲間入りしたのも、たった一人の兄をボルネオで亡くし、外国兵に肌を奪われてからだ。
焼ビルの地下には、ジープのお美乃(松尾嘉代)、ふうてんお六(石井トミコ)、町子(富永美沙子)と、皆暗い過去を背負った女たちがたむろしていた。今日も闇市では、仲間の掟を破った夜の女が、激しいリンチをうけていた。彼女らの中には、よその女に縄張りを荒させない、ただで男と寝ないという掟が生きていた。一方関東小政の刺青をもつ、おせんは、進駐軍の兵隊を半殺しにした復員姿の新太郎(宍戸錠)を助けた。すさんだ生活をしていても、小政たちもやはり女だ。
たくましい男を見て、彼女らの中に愛に、似た感情が湧いて来た。そんな時、町子が小笠原(江角英明)というなじみの客と、結婚を約束して代償なしに身体を与えていることがバレてしまった。怒り狂った小政、マヤらは、地下室に町子を宙吊りにすると、リンチを加えた。途中、新太郎にさえぎられたものの、すさまじいリンチは、マヤの身体に忘れていた女の生理をよみがえらせた。そして新太郎に強烈にひきつけられていった。一方新太郎は、進駐軍のペニシリンをもっていた。

「肉体の門(1988)」の解説
終戦直後の東京で娼婦としてたくましく生きる女たちの姿を描く。田村泰次郎原作の同名小説の五度目の映画化で、脚本は「吉原炎上」(脚本構成)の笠原和夫が執筆。監督は同作の五社英雄、撮影は「竜馬を斬った男」の森田富士郎がそれぞれ担当。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 1988年4月9日
監督:五社英雄
原作:田村泰次郎
出演:かたせ梨乃 加納みゆき 山咲千里 長谷直美 芦川よしみ 松岡知重 西川峰子 松居一代 マッハ文朱 小野沢智子 椎名友美 久米朗子 勇家寛子 福田直美 汐路章 志賀勝 光石研 ディック・バトルウォーサー クロード・チアリ 芦田伸介 名取裕子 根津甚八 渡瀬恒彦



