八神康子 墨東綺譚 新藤兼人監督が、永井荷風の同名小説に同じ荷風の「断腸亭日乗」を盛り込む形で映画化した作品。洋行帰りの小説家・荷風(津川雅彦)が玉ノ井の遊女・お雪(墨田ユキ)に恋をし、結婚の約束をするが…。
終始静かなタッチで語られる、年齢も境遇も違う男女の恋。墨田ユキ扮するチャーミングな遊女もさることながら、一代の放蕩児という役柄をギラギラせず、すべてを受け流すような自然体で演じた津川雅彦の荷風が爽快な後味を残す。単に男女のロマンスを描いた作品ではなく、戦争へと突入して行く当時の日本の世相や風俗を、ニュース・フィルムを交えて表現しており、そうした描写まで淡々としているのが本作の個性。
なお東京大空襲で焼失した東京の描写にマットペインティングが用いられているあたりは、老いてますます盛んな巨匠の表現への意欲を感じさせる。

墨東(ぼくとう)、玉ノ井に咲いた可憐な娼婦お雪との狂おしいまでのロマンスを中心に、文化勲章受賞作家であり、一代の遊蕩児であった永井荷風の半生を描く。脚本・監督は「さくら隊散る」の新藤兼人。撮影は同作の三宅義行がそれぞれ担当。
1992年製作/116分/R15+/日本
配給:ATG=東宝共同(提供 ATG)
劇場公開日:1992年6月6日
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